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学会の記録

設立趣意書

 観光研究は、おおよそ1990年代に入ってから、人文・社会科学の領野において世界的に大きな進展を見せています。資本主義社会における象徴的な移動現象である観光は、近現代社会、とりわけグローバル化が進展する現代社会を理解するために、極めて重要な研究対象だからです。
日本においても、2003年1月に「観光立国宣言」が出され,2008年10月には観光庁も設置されるなど、社会的に観光振興に注目が集まるなかで、次第に観光の研究が盛んになっています。多くの大学で観光関連の学部・学科が相次いで新設され、科学研究費補助金等の研究助成の対象としても観光分野が重視されるようになるなかで、研究推進のための基盤も整いつつあります。まさに日本における観光研究は、既存の研究を基礎にしながら、これから質量ともにより充実していく段階に入っているといえます。
こうした状況のなかで、日本における観光研究に求められているのは、理論的な学術研究の進展です。これまでの日本における観光研究は、その実学的性質から、学術的考察や分析の面で脆弱であったことは否めません。今後必要となるのは、かかる現状から一歩踏み出し、理論的な学術研究をすすめて観光研究の質を向上させ、それにより観光学をより成熟させるばかりでなく、学生教育の内容もより充実させ、地域社会や実業界にもより有益な研究成果や人材を提供することであると考えます。特に、適切な査読制度に基づく高度な学術論文を掲載する学会誌を発行することや、国際的な研究交流を進展させること、そしてすぐれた若手の研究・教育者を育成することが喫緊の課題となっています。
そこで我々は、観光に関する学術研究の進展を目指す、新しい学会の設立を発起することにいたしました。

平成24年2月26日

沿革

2012年2月 発足
2012年7月 第一回大会を和歌山大学にて開催
2013年7月 第二回大会を奈良県立大学にて開催
2014年2月 第一回研究集会を立命館大学と共催にて開催
2014年7月 第三回大会を京都文教大学にて開催

初代会長挨拶

21世紀も、10年ほど経て、観光学の学問的樹立が改めて大きな課題になっている。特にわが国の場合、これまで観光研究は量的増加に終わっていて、その真髄となる理論的研究では、世界的にみて脆弱性があったことを否定できない。ここに、観光の実践業務でもいわれるほどの成果を挙げていない原因の1つがあるという声もある。このことは、他の学問分野を見れば、はっきりしている。理論は、確かに実践から生み出されるが、理論は実践を推進する槓桿となるものである。
この時にあたって、観光の理論的研究を主軸とする『観光学術学会』が発足する意義は大きく、本学会に課せられた責任は重大である。本学会では、若手研究者の育成をモットーの1つとしているが、この点については、理論の推進は、いうまでもなく、その担い手の育成のいかんに依存することを特に強調しておきた。観光関係においても、優秀な人材の育成に最も必要とされることは、なんといっても、観光関係専門的な教育機関の発展・充実であり、現在のわが国の場合、特に大学院、とりわけ博士課程の充実が特別に強く望まれるのである。わが国では、この点でも、他の諸国とくらべてかなりの立ち遅れがあり、その急速なる克服が喫緊の課題であると考える。
ちなみに、観光研究で世界的に著名なイギリス・サリー大学のトライブ教授によると、同国では観光に関するドクター論文は、1990年から2002年の間に8倍以上になっている(注)。これが、同国の観光教育に対し大きな推進力なっている。本学会の活動も、実際には、こうした大学はじめ各種高等教育機関の活動・発展・展開を土台にするものであることを改めて痛感する。本学会の発足にあたり、大学院を含めた観光関係高等教育機関のさらなる発展・充実を心から希望する次第である。
(注:Tribe,J.(2007),A Review of Tourism Research, in: Tribe and Airey(eds.), Developments in Tourism Research, p.5)

平成24年2月26日
観光学術学 初代会長 大橋昭一