2023年7月の総会において、会長として選出頂きました遠藤英樹です。私でどこまでのことができるか個人的には心もとないところでございますが、第一期会長・大橋昭一先生、第二期および第三期会長・橋本和也先生、第四期会長・藤巻正己先生の体制のもとで積み上げてこられたことを、しっかりと受け継ぎ、後戻りさせずに前進させていけるように、先生方のお力を借りて鋭意努力して参りたいと存じております。
われわれを苦しめて参りました新型コロナウィルスの感染拡大が、新たな段階に入り、ウィズ・コロナであるとともにアフター・コロナでもある状況となり、国内外からの観光客も大きく戻ってきております。その中で、観光は、新たなステージに入りつつあるのではないでしょうか。私たちがあたりまえのように観光と思っていたものが観光ではなくなり、これまで観光とは思ってもいなかったような現象も観光に入るようになるのだと思います。
それに応じて、観光を学術的に研究する本学会も、創立以来10年を過ぎ現在約400名を超える会員を擁するに至り、新たなステージに入っているように思います。これまでも着実に発展を遂げて参りました本学会の次のステージにおきまして、今後、さらに一層、観光学術研究を推進・発展させていきたいと思っております。とくに私としては以下のことを大切に進めて参りたいと存じます。
一つ目としては、年齢・性別・身分・国籍などかかわりなく、すべての学会員の先生方が対等かつフェアなかたちで、伸びやかに研究活動をすすめ、相互にその成果を適切に享受していけるような環境・ルールをより一層、整えていきたいと考えております。
二つ目としては、多様なディシプリンを背景とした研究交流・研究コミュニケーションをより活発に行っていきたいと考えております。観光が新たなステージに入りつつあるこの状況を明瞭かつ鋭敏にとらえていくためには、何らかのディシプリンに特化するだけでは不可能であると考えております。そのためには地理学、社会学、文化人類学、民俗学、心理学、歴史学、哲学、メディア論、美学、文学といった人文科学分野はもちろんのこと、経営学、マーケティング論、経済学、政治学などの社会科学分野、さらには都市工学、建築学、農学、情報学といった分野からの観光研究をクロスさせ、融合させ合い、混淆的な観光学をより活性化させて参りたいと考えております。
三つ目としては、それゆえ、他学会との交流・交差を一層進めて参りたいと思っております。
四つ目としては、すぐには対応できないかもしれませんが、日本だけにとどまらず、世界の観光研究の中に本学会をしっかりと位置づけていけるように、海外の研究機関とのコラボレーションも進めていけたらと考えております。
五つ目としては、これら研究活動を推進していくために、学会の制度化・ルール化作業をより整えてまいりたいと思います。
以上のことは、もちろん、前任の会長である大橋先生、橋本先生、藤巻先生の体制のもとでしっかりと進められてきたところではございますが、最初に申し上げたように、私のところで歩みをとめずに、それどころか観光の新たなステージに即応できる学会となれるように、どんどんと進めて参りたいと考えております。私の力は本当に小さなものではございますので、どうか、会員の皆さまのお力をお貸し頂ければと存じます。今後ともどうか宜しくお願い申し上げます。
2023年7月9日
観光学術学会 第五期会長・遠藤 英樹